社労士通信

一人親方は労災保険に入れる?加入方法とメリットについて解説

2022年11月08日

一人親方として独立した際、ケガをしてお仕事に従事できなくなった場合の補償が心配ですよね?

そこで万が一の備えとして考えられる方法の一つに「労災保険」があります。
しかし、事業者であり労働者でもある一人親方は加入できるのでしょうか。

一人親方が労災保険に加入するには、特別な保険に加入しなくてはならず、手続きも自分で行います。
この記事では、一人親方労災保険の概要やメリット、加入しない場合のリスクについて解説します。

これから一人親方として活動される方は、ぜひご覧ください。

労働保険とは

労働保険とは、事業者に雇用されている労働者が加入する保険で、労災保険と雇用保険があります。
雇用保険は何らかの原因で労働者が離職する際に使う保険のため、一人親方にはあまり関係ありません。

当記事では除外し、労災保険についてご説明します。
労災保険は、労働者が仕事中や通勤中の災害でケガをしたり病気にかかったとき、その影響を補償するためのものです。
一人親方でも、労災保険は加入しなくてはなりません。

一人親方は加入できない?

労災保険は、通常事業者に雇用されている労働者が加入するものです。
一人親方は職人として独立している事業者であるため、通常は加入できません。

しかし、実際は経営者でありながらほかの労働者と同じような業務についています。
このことから、一人親方は労災保険の特別加入制度の対象となり、専用の保険に加入できます。

一人親方の労災保険が通常とは異なる点

特別加入制度の対象である一人親方は、加入する労災保険も専用のものになります。
加入先である事業所も通常のものとは異なるため、手続きの際はご注意ください。

ちなみに、一人親方は通常の労災保険には加入できません。
労災保険を扱う事業者は複数あるため、間違えないようにしましょう。

一人親方労災保険のメリット

一人親方労災保険に加入していると、さまざまなメリットが受けられます。

• 仕事や通勤中のケガや病気なら自己負担なしで治療を受けられる
通常、ケガや病気にかかると治療費を支払います。
労災保険に加入している人が仕事中や通勤中にケガや病気にかかった場合は、治療費はかかりません。

すべて保険で賄えるため、無料です。
治療費を気にしなくてよいのは、労災保険の大きなメリットといえます。

  • 休業補償を受けられる
    一人親方だと仕事をしない日は完全に無休になるため、休業中は別の方法で収入を得なくてはなりません。
    生活費はもちろん、業務にかかる費用もすべて自分で用意することになります。
    補償がない人は貯蓄などから賄わなくてはなりませんが、労災保険に加入すれば給付基礎日額に応じた補償を受けられます。

ケガや病気により働けなくても給付を受けられるため安心です。

  • 障害補償
    仕事や通勤中のケガや病気が原因で、心身に障害を負い働けなくなることもあります。
    労災保険に加入していれば、障害の程度と給付基礎日額に応じた補償を受けられます。
    最悪、今まで通り働けなくなっても、障害補償を使えば新しい人生のスタートを迎えられるでしょう。
  • • 遺族補償
    勤務中や通勤中の事故などが原因で万一の事態に遭遇しても、労災保険に加入していれば補償を受けられます。
    労災保険の遺族補償は、一定の遺族とその人数・給付基礎日額に応じた保障額が支払われます。
    最悪の事態に遭遇しても、残された家族の負担を軽減できるため安心です。
  • •元請け会社または所属会社が安心して仕事を任せてくれる
    近年、国は安全性が不十分な現場に対し、厳しい指導を実施しています。
    そのため多くの企業が、労災保険未加入の労働者や一人親方に仕事を回したり、現場に入れたりしないようにしています。

一人親方労災保険への加入は、スムーズに仕事を回してもらうには不可欠な保険であるといえるでしょう。
指導される前に加入していれば、元請け会社や所属会社に対して、安心感を与えられます。

このように労災保険にはさまざまなメリットがありますが、これらのメリットは加入しないと得られません。
一人親方として活動するなら、必ず加入しておくべきです。

労災保険へ加入しない場合のリスク

現在、多くの一人親方が労災保険に加入していますが、まれに加入していない人もいます。

未加入の場合、万一の事態に遭遇すると収入が大幅に減少するため、資金繰りや生活費の入手が困難になります。
また、労災保険未加入の一人親方は、仕事を回してもらえなくなったり、現場に入れなかったりする可能性が高いです。

一人親方として万全の態勢を整えスムーズに仕事を得るには、労災保険の加入は必須といえるでしょう。

例えば、一人親方労災保険の事業者である「一人親方団体労災センター」では、ほぼ日本全国で加入を受け付けています。
未加入なら、まずはお問い合わせみてください。

一人親方労災保険の加入方法

一人親方労災保険に加入する際は、どのような手続きをすればよいのでしょうか。
次の章からは、通常の労災保険とは違う一人親方労災保険の加入方法を解説します。

事業所で手続きをする

一人親方労災保険をはじめとした特別加入は、個人単独ではできません。
都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体で手続きを行います。

手続きは以下の方法のうち、どちらかを選択します。

  • ほかの一人親方で働いている人とともに特別加入団体を作って申請する
  • すでに承認されている団体を通じて加入する

一般的に、すでに承認されている団体から加入する人が多く、前の章で解説した「一人親方団体労災センター」も、そのひとつです。
手続きは事務所に直接足を運んでもできますが、パソコンやスマートフォンからも可能です。

急いでいる人は、電子手続きから始めた方が早く申請できるため、おすすめです。
このほか、郵送やFAXも利用できます。

申し込みフォームや書類に入力・記入する

次に申し込み作業に取りかかりますが、申請方法により手続きのやり方が変化します。
やり方は事業所により細かい部分は異なるものの、以下の流れで進みます。

  • ネットを通じて申し込む
    事業所の公式ホームページにある専用フォームに必要事項を入力・申請するやり方です。
    後はメールや、場合により郵送でやり取りします。
  • 郵送やFAXで申し込む
    郵送やFAXを利用したい人は、事業所のホームページから必要書類をダウンロードしましょう。
    ダウンロードした必要書類を印刷、記入したら郵送またはFAXで事業所へ送ります。
  • 事業所に直接足を運ぶ
    事業所で必要書類をもらい、記入して提出します。
    書き方を教えてもらいながら書類を用意したい人におすすめです。
    しかし、直接足を運ぶ必要があるため手間がかかります。

手続きを終えたら費用の通知書が来るまで待機しますが、加入前に必要な手続きがある人にはその連絡が来ます。

必要な場合は健康診断の結果を提出する

一人親方労災保険は、加入の際健康診断が必要な場合があります。
このケースに該当する人には、受けるべき健診の内容を伝える書類が来るため、医療機関に行き書類を用意してください。

  • 粉じん作業
    過去に通算して3年以上粉じん作業を行う業務についていた場合、じん肺健康診断を受けなくてはなりません。
    粉じん作業は、土石・岩石・鉱物・金属・研磨剤・セメント・フライアッシュ・炭素原料または製品などを扱う作業やその作業を行う場所にいた場合が該当します。
  • 振動工具使用の業務
    過去に通算して1年以上振動工具を使う業務に従事していた人が該当します。
    振動工具として認められるのは、チェーンソーなどの圧搾空気を動力源とするものや、内燃機関・電動モーターなどの動力により駆動する工具で、身体またはその一部に激しい振動を与えるものです。
    これらの工具を使用していた人は、振動障害健康診断を受けなくてはなりません。
  • 鉛業務
    過去に通算して6か月(半年)以上鉛を扱う業務に従事していた人は、鉛中毒健康診断が必要です。
    鉛や鉛を含む薬剤や製品を作っていた人や、換気の不十分なところでのはんだ付け作業などを行っていた人が該当します。
    心当たりがあるなら、申し込みの際に申請しておきましょう。
  • 有機溶剤業務
    ドライクリーニングや塗装業など、一部の仕事では有機溶剤を使います。
    有機溶剤を使う仕事に通算して6か月(半年)従事していた人は、有機溶剤中毒健康診断が必要です。
    該当する有機溶剤は事業所の申し込み案内ページに記載されているため、確認しておきましょう。

費用の通知案内が届く

すべての手続きと書類提出が終わると、事業所から費用計算の連絡が来ます。
銀行口座やATMまたは支払い用紙から、指定された保険料を振り込みましょう。

保険料の支払いが確認されると、事業所が労働局へ加入申請してくれます。
後は加入証明書と組合員証を待つだけです。

加入証明書と組合員証が発行される

手続きが滞りなく終われば、組合員証と領収書が自宅に届きます。
労働保険番号など、元請け会社や所属会社に提出が必要な情報が記載された加入証明書は、メールやFAXで送られます。

加入証明書は比較的早く送付される傾向にあり、手続き完了した当日または翌日に送ってくれる事業所が多いです。
手続きに不備がなければ、その分処理にかかる時間も短く済みます。
申し込みや書類提出の際は、間違えないよう確認しながら入力・記入しましょう。

労災保険加入時に発生する保険料と費用

労災保険は支払う額が大きくなればなるほど、補償が手厚くなります。
加入の際は保険料の仕組みを理解したうえで、適切な保険料額を選択しなくてはなりません。
一人親方労災保険に使われる保険料の用語や仕組みを解説します。

給付基礎日額とは

一人親方労災保険は、「給付基礎日額」をもとに計算します。

給付基礎日額とは、保険料や休業補償給付などの金額を算定する際に、基礎となる金額です。
事業所により金額や提示方法は微妙に変わりますが、日額で提示されています。

保険料が高ければ高いほど補償が手厚くなる仕組みで、加入月でも保険料が変化します。
金額が低いとその分保険料も安くなりますが補償額も下がるため、検討の際は保障額を意識しながら検討しましょう。

給付基礎日額を変更したい場合、3月2日~3月31日の間または年度更新期間中に申請書を提出しなくてはなりません。
また、変更は翌月から適応になり、提出前の労災は適応外になる点にもご注意ください。

保険料の計算方法

一人親方労災保険の保険料は、給付基礎日額に365日をかけたものに事業所ごとに定めた保険料率を乗じて計算します。
多くの事業所が早見表を提示しているため、加入の際はホームページで確認しましょう。

なお、年度途中で新たに特別加入者になったまたは特別加入者ではなくなった人は、その年度内の加入月数から保険料を算出します。
加入前に早見表などを参考にしながら、補償額を考えるとより具体的な額で検討できます。

一人親方労災保険は、保険料が高すぎると負担になり、低すぎると万一の保障として機能しません。
加入の際は、現実的な金額はどれくらいかを考えてから手続きしましょう。

入会金や組合費も必要

加入には保険料だけでなく、事業所に加入するための費用も必要です。
入会金や組合費も発生することを覚えておきましょう。

入会金や組合費は、保険料とは違い基本一定額のみです。
条件を満たせば無料や割引を受けられる事業所もあります。

一人親方労災保険に加入する際、保険料に目が行きがちですが、加入に必要な費用にも注目しましょう。
費用だけでなく、無料や割引制度の適用条件もあわせて調べてください。

まとめ

一人親方は、事業者のため本来労災保険には加入できませんが、労働形態の関係から特例での加入が可能です。
専用の事業所にて手続きをしなくてはならないため、ご注意ください。

加入の際は、以下の流れで手続きを行います。

  • 事業所の事務所に行くかホームページにアクセスする
  • 申し込みフォームや書類に入力・記入する
  • 必要な場合は健康診断結果を提出する
  • 費用の通知案内に従い保険料を支払う
  • 加入証明書と組合員証を受け取る

手続きは不備がなければスムーズに終わり、人により当日または翌日に受け取ることも可能です。
不備が発生しないよう確認しながら手続きをしましょう。

一人親方労災保険は、特別な保険料の計算方法を採用しています。

  • 給付基礎日額
  • 保険料の計算方法や早見表
  • 入会金や組合費

計算や支払いに必要な知識を忘れないようにしましょう。

一人親方労災保険は、一人親方の強い味方です。
事業所の中には千葉をはじめとした全国に事務所を構えているところもあります。

まだ未加入の人は、できるだけ早めに手続きを終えましょう。

お問い合わせ

東京都江東区の斉藤労務管理事務所は東京・千葉を拠点に人事・労務を中心に業務を行っている社会保険労務士事務所です。業務内容・料金などについては、お電話または、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。
無料相談も受け付けております。お気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせは

03-6457-1153

受付時間:9:00 - 18:00(土日祝・年末年始除く)