社労士通信

2024年に改正されるトラック運転者の改善基準告示とは?変更点を解説!

2024年02月01日

トラック運転者の労働時間などに関する基準を定めた「改善基準告示」が2024年に改正されます。

改善基準告示はドライバーとして従事する労働者の健康と安全を守るための基準であり、大幅に改正が行われるのは1997年ぶりのことです。

本記事では、改善基準告示の目的や詳細とともに改正されることになった理由についてもご紹介しています。

今回の改正で何がどのように変わるのか、自分の働き方にはどのような影響があるのかを、事前にしっかりと確認しておくとよいでしょう。

改善基準告示とは?

改善基準告示は1989年に策定された厚生労働大臣告示です。

主に運転者として働く人たちの労働条件を改善させるためのルールが定められています。

まずは、その目的や対象者とともに、違反した場合はどうなるのかを詳しく解説します。

目的

トラックやバス・タクシーなどの運転者は昼夜が逆転したり長時間労働になりやすかったりするため、身体的・精神的負担は大きなものであると考えられます。

運転者本人の健康を守ることはもちろん、交通事故を引き起こして周囲にいる人を巻き込むといった事態が起こらないようにするためにも、できるだけ負担を軽減するための対策が必要とされているのです。

改善基準告示には運転者として働く人たちの労働条件を向上させることを目的として、拘束時間の上限や休憩の与え方などに関するルールが定められています。

対象者

厚生労働省によると、改善基準告示の対象となるのは「労働基準法第9条に規定する労働者であって、四輪以上の自動車の運転の業務に主として従事する者」とされています。

主に会社に雇用されていて給与を受け取っているトラックやバス・タクシーの運転者が対象であり、バイクは「四輪」ではないため対象にはなりません。

また、同じ運送業の会社に勤めていても、事務員のように運転業務に携わらない従業員は対象外です。

「運転の業務に主として従事」しているかどうかは、物品または人を運搬するために運転する時間が労働時間の半分以上を占めていて、その運転業務に従事する時間が年間総労働時間の半分を超える見込みがあるかどうかで判断します。

出典:厚生労働省「改善基準告示(令和6年4月1日適用)に関するQ&A

違反するとどうなる?

改善基準告示は厚生労働大臣告示であり、法律ではありません。
そのため、違反が認められても懲役や罰金などの罰則を受けることはありませんが、労働基準監督署による指導が行われることはあります。

また、国土交通省から行政処分を受ける可能性もあるため、違反しないよう注意が必要です。

場合によっては、車両の使用が一定期間制限されたり、事業停止を命じられたりすることもあります。

行政処分は会社にとって大きな損失につながる恐れがあるため、改善基準告示の内容をしっかりと把握したうえで、従業員の労働状況を管理していくことが大切です。

トラック運転者に適用される改善基準告示の詳細

トラック運転者に適用される改善基準告示については主に「拘束時間」「休息期間」「運転時間・連続運転時間」の3つが定められています。
主にどのような内容が定められているのか詳細をご紹介します。

拘束時間

拘束時間とは、始業時間から就業時間までの時間のことです。

会社に拘束されるすべての時間が拘束時間になるため、運転している時間や荷受け・荷下ろしなどの実作業を行っている時間はもちろんのこと、休憩時間や荷待ちの時間なども入ります。

休憩時間は労働者が自由に過ごしてよい時間ではありますが、会社からの指示命令があれば従う必要があるため、完全に自由になる時間とはいえません。
そのため、労働時間には含まれませんが、拘束時間には含まれます。

トラック運転者の拘束時間は改善基準告示によって1ヶ月・1週間・1日の単位で上限が決められており、一部例外を除き、その時間を超えて労働させることは認められていません。

休息期間

改善基準告示では、運転者に継続して与えるべき休息期間が定められています。

休息期間とは、勤務が終わって次の勤務が始まるまでの、労働者が完全に自由になる時間のことをいいます。
休息期間には自宅や社宅に帰ってテレビを見たり睡眠をとったり、家族と過ごしたりすることが可能です。

休憩時間はあくまでも仕事の途中で与えられるものであるため、会社からの指示や命令が届く状態であるといえます。
そのため、休息期間とはまったくの別物として考えなければなりません。

特に、長距離運転をすることが多いトラック運転者は疲れがたまりやすく、次の仕事が始まるまでの間にしっかりと休息をとることが大切です。

運転時間・連続運転時間

改善基準告示では、運転者が1日のうち運転できる時間の上限についてもルールが決められています。

トラック運転者の場合は、2日間で平均1日の運転時間の上限と、2週間で平均1週間の運転時間の上限がそれぞれ定められています。

また、連続で運転できる時間についてもチェックしておきましょう。

長時間運転を続けていると疲労がたまり、集中力や注意力が低下したり、眠気に襲われたりすることもあると思います。

居眠り運転による事故を防ぐためにも、定期的に運転を中断し、休憩することが大切です。

2024年に改善基準告示が改正される理由

この度、改善基準告示の改正が行われ、2024年4月より適用されることが決まっています。
改正が行われた理由には、労働者を取り巻く労働環境が関係しています。

近年は働き方改革関連法の改正などが行われ、働き方に関するルールが大きく変わりつつあるのが現状です。
なかでも労働時間に関する規制は最も重要とされており、各企業は過重労働を緩和するための取り組みに力を入れています。

特にトラック運転者は平均年齢の上昇幅が大きいことや、脳・心臓疾患による労災支給決定件数の割合が高いことなどもあり、さらなる労働条件の向上が求められてきました。

こうした理由から、改善基準告示の見直しが必要とされるようになったのです。

2024年の改正で何が変わる?

2024年の改正により、上記でご紹介したような改善基準告示の内容が一部変更になります。
拘束時間・休息期間・連続運転時間をはじめ、そのほかどのような点が変更になるのかを詳しくご紹介します。

出典:厚生労働省・国土交通省リーフレット「トラック運転者の改善基準告示が改正されます!

拘束時間が短縮される

まず、1ヶ月における拘束時間が現行の「293時間以内」から「284時間以内」に、合計9時間短縮されます。

ただし、例外として以下の条件を満たしていれば1ヶ月の拘束時間を「310時間以内」とすることが認められる場合もあります。

  • 労使協定を締結していること
  • 1年の拘束時間が3,516時間を超えないこと
  • 延長できるのは年6ヶ月までとすること

また、1日の拘束時間については「13時間を超えないものとする」という点に変更はありません。

しかし、延長可能な場合の拘束時間の上限が「16時間」から「15時間」に変わります。

忙しい時期などは拘束時間の延長が必要になることもあるかもしれませんが「拘束時間が14時間を超える日は1週間に2回まで」を目安にする必要があります。

休息期間が延長される

現行では、勤務終了後に8時間以上続けて休息期間を与えることになっていましたが、改正後は「休息期間が11時間以上になるよう努める」とされます。

最低でも9時間を下回らないようにする必要がありますが、下回ってしまった場合は、その日の勤務が終わった後に12時間以上の休息を継続して与えなければなりません。

ただし、長距離貨物輸送の場合だと宿泊が必要になることもあるため、その場合は週2回まで「継続8時間以上」の休息期間を与えることが認められます。

そのほかの変更事項

「運転中に車両が故障した」「災害・事故により道路が封鎖された」などの予期し得ない事象が発生した場合は、その事象に対応した時間を1日の拘束時間や運転時間・連続運転時間から除くことができるようになります。

ただし、その場合は運転日報による記録だけでなく、公的機関のHP情報など客観的な記録も提示しなければなりません。

そのほか、分割休息を与える場合や2人で乗務する場合、隔日勤務する場合、フェリーを使用する場合などの特例も定められるため、確認しておくとよいでしょう。

まとめ

トラック運転者に適用される改善基準告示が2024年に改正されるにあたって、どのような点が変更になるのかを詳しくご紹介しました。

改善基準告示とは、トラックをはじめタクシーやバスなどの自動車運転に従事する労働者が健康で安全に働けるようにするためのルールです。

労働環境の変化に伴い、運転者の労働条件をよりよいものにするために改正されることが決まっており、拘束時間の短縮や休息期間の延長などの変更が行われます。

本記事では、トラック運転者を対象として改善基準告示の変更点をまとめました。

対象となる運転者や、運転者を雇用する企業はしっかりとその内容を確認しておきましょう。

お問い合わせ

東京都江東区の斉藤労務管理事務所は東京・千葉を拠点に人事・労務を中心に業務を行っている社会保険労務士事務所です。業務内容・料金などについては、お電話または、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。
無料相談も受け付けております。お気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせは

03-6457-1153

受付時間:9:00 - 18:00(土日祝・年末年始除く)